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 先週の金曜日である9月4日、毎年恒例の高校生クイズが放映されました。番組はそれなりに楽しめたのですが、同時に不安のようなものが湧き上がってきました。オーバーに書くなら、その不安とは、今のクイズの環境はしだいに失われていくという予感めいたものです。

 高校生クイズを知らない人のために、番組の内容をかいつまんで紹介します。高校生クイズとは、高校生が3人1組で互いに協力しながら次々出題されるクイズを攻略し、全国の頂点を決める番組です。毎年8月末~9月頭になると日本テレビ系列で放送される「夏の風物詩」となっています。「クイズ甲子園」という形容がふさわしいかもしれません。「高校生版ウルトラクイズ」と書くと、イメージしやすい方もいるかもしれません。
 そんな高校生クイズも今年で29回目。この金曜日の放送は、各地方の予選を突破した52の高校が集い、ただ1つの優勝校を決める戦いを描いたものでした。

 僕も高校生クイズの出場経験があります。3回出場してすべて予選敗退。けれども、それはいい思い出として胸に刻まれています。高校を卒業してからも、毎年ではありませんが、都合があれば番組を見ています。
 一昨年は見ていません。昨年・今年は見ることができました。そんな昨年・今年と、出題されるクイズに難化傾向が伺えます。今放送されているクイズ番組の中で最高難易度。むしろ、頭3つくらい突き抜けている感じです。それでも勝負になるのだから、出場した高校生たちには舌を巻くしかありません。

 そんな今年の高校生クイズを見て、不安を抱いたのです。

 高校生クイズには果たすべき役割のようなものがあると僕は考えています。親子であーだこーだ言いながら楽しんで、子どもが「いつか高校生クイズに出るんだ!」と憧れを抱き、高校生になってその夢を果たしていく。こんな高校生クイズ像が僕の中に存在します。クイズファンにとっての「1年に1回の祭典」という要素はあるにせよ、「次の世代に憧れを抱かせる」という要素は外せないと思うのです。
 高校生クイズはその名のごとく、高校生にしか出場資格がありません。出場チャンスは生涯を通して3回のみ。これは、高校生以下の世代に常に喚起し続けないと、その規模は縮小していくことを意味します。
 去年今年の番組を見て、何人の子どもたちが憧れを抱いたのでしょう。逆に若年の視聴者は引いたのではと不安になるのです。狡猾に計算高くなってほしいとは思いませんが、今さえよければいいという自己満足的な番組姿勢には決して「良し」とは思えません。

 今、ゲームセンターに行くと『アンサー×アンサー』や『クイズマジックアカデミー』といったゲームが稼働しています。その気になればいつでもクイズを楽しめる環境があります。実にすばらしいことです。
 環境が整っているのはなぜか。当然、需要があり、かつ、需要に応える供給があるからです。需要も供給も、かつての「高校生クイズ」や「ウルトラクイズ」で、憧れを抱き、その憧れを失わずにいる、もしくは憧れを思い出した人たちが支えているのだと思うのです(僕もそんな1人です)。確たる証拠はありませんが、きっとそうに違いないのです。

 高校生クイズが変質していくと、この需要の部分に陰りが生まれてしまいます。せっかくの環境が脅かされる危険性をはらんでいるのです。需要がなくなれば、供給がストップします。経済活動の仕組みからいけば、当然のことです。
 せっかくの環境を失いたくはありません。

 今の高校生クイズのスタッフからは「思想」が感じられなせん。「工夫」がありません。ただただ、マニアのためのマニアによるマニアなクイズ番組に変質しています。クイズマニアが、かつて果たせなかった己の満足を果たすのに利用しているようにしか映りません。高校生クイズはマニアが自己満足を実現する道具ではありません。そんなマニア向けのコンテンツは別に用意すればいいです。
 編集にも疑問符が浮かびました。出題される問題と問題、逐一、間が多くとられていました。クイズ好きにとっては、このテンポにいらいらします。マニア向けの体をとりながら、編集はそうなっていない。統一感がありません。間を空けるなら、解説を挟み込めばいいのにと思います。難易度の高さを鑑みれば、この程度の視聴者への配慮があってしかるべきです。
(準決勝で出題されたMENSAの暗号。これにも「シーザー暗号」という名前が付いています。あの出題はパズルなんかではなく、知識を問う立派なクイズです。編集で解説を入れれば、視聴者にもその意味が伝わるのに! ちょっとの手間を惜しんでどうする!)
 司会・進行役も不必要に存在していたのも疑問です。司会者が出題しなくなったのって、今年からでしょうか? ここには書けない、いらぬ疑念・疑惑が浮かんでしまいます。かつては、プライドを持って司会者が問題文を読み上げていたはず。もはや司会者にプライドは不必要?

 何を見せるのか(What)、どう見せるのか(How)。そのどちらの視点も欠けていました。あたかも「資金不足」を免罪符にして、安易なところに逃げているかのようでした。
 高校生クイズを支えるスタッフには、クイズの世界を背負っている自覚を持っていただきたい。未来につなげる番組を創ってほしい。このように願うのです。

 思想も工夫も感じられない番組でしたが、出場した高校生は見事でした。期待通り、いや、期待以上のパフォーマンスでした。
 早押しクイズの的確な押しは超一級のものです。「見せ物」としてお金が取れそうです。スポーツ選手のファインプレーを見てうっとりするようなものです。その背景には、的確な押しを誘導する問題文の存在があります。(出題難易度のレベルの観点ではなく)練りに練られた先読みを誘導する問題文の質の高さには感心しました。この点においては、出題スタッフの苦労が伺えます。日向の当たらないところで縁の下の力持ちの役割を果たしています。
(それにしても、浦和高校の早押しは素晴らしかった! 惚れ惚れします。あれはまだまだ見ていたかった! 勝ち進もうとも負けてしまおうとも、あの後、早押しクイズはなかったのですが。)

 そういえば、あの芸能人たちは必要だったのでしょうか。資金が潤沢とはいえないのだからもっと適材適所に有効活用すべきなのでは? こんなところに「オトナの事情」が見え隠れします。

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