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バレンタインデー前日である今日2月13日、『禅』という映画を見に行きました。映画を見に行くのは『スウィングガールズ』以来のことです。
鎌倉時代の僧、道元にスポットを当てた映画です。
波瀾万丈とは言うにはオーバーになってしまう道元の人生です。しかし、うまくドラマを切り取り、道元が広めた、ひたすら座禅を組むという只管打坐の思想が全面に出ていました。広大な中国の様子や淡々と修行に励む僧たち、北条時頼の苦悩など、映画ならでは迫力がありました。
結論としては、見に行ってよかったと思います。
道元の人生を追うことで、鎌倉時代に禅が求められた背景がよくわかりました。
それよりも何よりも、道元の思想がよくわかりました。
道元の思想の根本は、当たり前のことを当たり前のように考える、ということなのでしょう。
それを一番象徴しているのは、「浄土」のくだりでしょう。死んでから浄土に行っても意味がない。今この瞬間が浄土でなければ意味がないというものです。
大前提から平安時代の浄土宗や浄土真宗とは大きく異なるのですね。
ネタバレになるので書きませんが、「豆」のエピソードもこの考え方によく則しています。印象深いシーンです。
「満月」のシーンも、当たり前のことから見事な結論を導き出しています。
ただ理解できないことも多々ありました。
「1人1人の中に仏がいる。己自身が仏なのだ」という考え方は、まだ理解に到達できていません。先に書いた「当たり前のことを当たり前に用に考える」とリンクしないのです。「煩悩」とか「欲」とかがキーワードになるところまではわかったのですが。
おりんという登場人物(おそらく創作されたキャラクタ)が出てきます。この映画におけるおりんの役割も理解できませんでした。おりんのエピソードを全カットしても、映画の趣旨には差し支えがない気がするのです。おりんがいるから「豆」のエピソードなどが生まれるのもわかりますが、他にも描きようがあったはずです。
あとは仏教用語が多く出てくる関係で、音で聴いても理解できない単語がたくさんありました。予習しておくと理解が進むのでしょうが、見終わった後では後の祭りでした。
映画前に解説のチラシでも配布してくれればいいのにと思いました。その役割はパンフレットが担っているのでしょう。
けれども、映画を楽しく見てもらう努力は、映画を見せる側、作る側に求められるものでしょう。観客に負担をかぶせてはいけないと思うのです。
この『禅』という映画は、決して娯楽映画ではありません。どうしても事前の教養が求められます。その教養を埋めるためにもチラシ1枚入れてほしいというのは、わがままなのでしょうか。
まあ、僕が行った映画館では普通のチラシすら置いていなかったのですが。口コミで広めようという気がないのでしょうか。驚きを覚えました。
慣習でしょうからとやかく言っても仕方がないのですが、本編前の宣伝(しかもターゲット無視で内容が全くかみ合っていない)を強制的に見せる努力をするくらいなら、口コミで広めるための努力をする方がよっぽど健全じゃないかと思います。
結論として、道元の思想について予習をして教養を埋めておくと、楽しさが倍増する映画でした。そうすると充分楽しめます。ちなみにパンフレットには用語解説が載っていました。
細かい楽しみ(?)としては、突っ込みどころがたくさんあります。
○○(伏せておきます)の大きさのバランスがおかしかったり、現実にはおき得ないことが起きていたり、鎌倉時代には存在しないはずの言葉が発せられていたり、そんなことを探しながら見るのも一興です。
……うがった見方をするな、と怒られそうですが。しょうがないんです。まずは自分のフィルタを通して、どこまで信じていいのか確かめる癖がついてしまっているのです。
○映画『禅』公式ページ
あらすじなどを見ることができますが、ネタバレが嫌いな人は後で見た方がいいでしょう。
http://www.zen.sh/
http://www.kadokawa-pictures.co.jp/official/zen/
○曹洞宗・曹洞禅ネット
なんと道元の漫画が掲載されています。『漫画 日本の歴史』のような学習漫画の形態になっており読みやすくなっています。これもネタバレを含むので、映画を見た後の方がいいかもしれません。トップページから「サイトマップ」→■コミック曹洞宗「道元さま」とたどってください。
http://www.sotozen-net.or.jp/
映画内に出てきた道元の言葉をメモしておきます(後で調べたもの)
眼横鼻直(がんのうびちょく)なることを認得(にんとく)して人に瞞(まん)せられず |
春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり |
八大人覚(はちだいにんがく) |
自分のアンテナに引っかかった面白いもの、興味惹かれるものも収集して記録しています。
不定期連載です。気の向いたときにお立ち寄りください。
http://bookdiary-k.blogspot.com/
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