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 先日『クヌース先生のドキュメント纂法』なる本を読みました。数学混じりの文章を書くための手法をまとめた本です。
 詳しく読書記録をこちらにアップしています。

 この本の後半、131ページから「Mary-Claireの作文課題プリント」なる作文講義が登場します。この作文課題プリントは、作文技能を向上させるためのエクササイズです。大項目だけで12にわたり、その数は多いのですが、知られていない課題も多く、もっと広く知られていい内容もあります。
 原文は英語であるため、そのまま日本語のエクササイズになりえない課題も散見します。原文と翻訳を参考にしながら、この「Mary-Claireの作文課題プリント」を再編集しました。
 作文指導に携わっている人がこの『クヌース先生のドキュメント纂法』を目にすることはそうあまりないでしょう。数学関係者以外にも目に留めてもらうきっかけとなれば幸いです。

 ところで、あまり大きな声で言えませんが、『クヌース先生のドキュメント纂法』の原版である『Mathematical Writing』のpdf版がここにあります。なぜここにあるのかはわかりませんが、こっそり楽しんでください。


[1] 語彙

(1-1) 言葉の置き換え
 5ページ程度の文章を選び、1つの文につき少なくとも3個の言葉をほぼ同じ意味を持つ他の言葉に置き換える。これをすべての文について行う。

(1-2) 類義語探し
 言葉を1つ選び、その言葉の同義語・類義語を思いつく限り書く。その結果を類義語辞典(シソーラス)を比べてみる。

[2] 構文

(2-1) 文の書き換え
 5ページ程度の文章を選び、使用語句をできるだけ変えないようにして、元の文章とは異なる構文になるようにすべての文を書き換える。
※ここでいう構文とは平叙文・疑問文・命令文などの文の種類、あるいは能動態・受動態といった態の種類を表す。

(2-2) 並行記述(tight parallels)をする
 文の要素(主語・述語・修飾語・接続語・独立語)が一致する2つの文章を書く。または、付属語(助詞・助動詞)が一致し、自立語(名詞・動詞・形容詞・副詞・接続詞など)の部分が異なる2つの文を書く。

(2-3) 掉尾文(とうびぶん、periodic sentence)を書く
 文末まで文の主要素(SVOC)が完結しない文を書く。つまり文末まで読まないと文意がつかめない文を書く。
※日本語の文は述語が最後に来るので、原則、掉尾文になる。反対語は散列文(loose sentence)

(2-4) 強調点をスライドさせる
 文意が同じで強調点が異なる文を書く。

(2-5) ナンセンスな文を作る
 文章の構成や語彙の使い方などは正しいが、意味のない文ナンセンスな文章を作る。

[3] 肉体労働

(3-1) 様々な手段で複写する
 自分・他人を問わず任意の文章を選び、その文章をキーボードでそっくり打ち直す。また、鉛筆・ペンなど数種の筆記具で文章を書き写す。利き手・逆の手でも書き写す。

(3-2) 様々な題材を複写する
 好きな文章、嫌いな文章、読みにくい文章、たわいもなく読み通せる文章、まねしたい文章、自分とは違うスタイルの文章、何百年も前の文章、最近の文章、なぐり書きの文章、推敲が重ねられた文章を題材として、それぞれを書き写す。

[4] 音声分析

(4-1) 録音筆記
 ラジオのニュース・講演・テレビ番組・日常会話をそれぞれ5分程度録音し、文章に起こす。また、即興で原稿なしの独り語りを5分間吹き込み、それを文章に起こす。

(4-2) 音読
 自分の文章を自分で音読する。また、他人(友達や知らない人)に音読してもらう。

[5] 要旨

(5-1) 要旨同一の文
 まず、1つの段落からなる文章を作成する。次に、今書いた文章を見ずに、再度同じ文章を書く。

(5-2) 視覚化
 複数の場合分けで解説した文章や、複雑な人間関係の小説を題材にし、それを図や表などでわかりやすくまとめる。

(5-3) 見出し
 任意の写真に対して、内容に見合った見出しを1行で書く。また、2行分の見出しも付ける。

[6] モードチェンジ

(6-1) 読者に応じて書き分ける
 教科書のような説明文を子どもに説明するように書き直す。
 また、けさ何をしたかを、恋人(配偶者)や恩師に向けた手紙の形で書く。同様の内容を医師や警察官への報告書の形で書き直す。さらに、雑誌への記事の形に書き直す。

(6-2) 賛否両方の立場に立つ
 賛否がはっきりする平凡な議題を取り上げ、根拠を明らかにしながら賛成の立場で文章を書く。反対の立場でも文章を書く。

(6-3) 誇張
 自分の住まいを不動産広告のように宣伝する文章を書く。
 最近食べた食事をレストランのメニューのように宣伝する文章を書く。
 机の上の品物を1つ選び、ダイレクトメールの文章のように宣伝する文章を書く。

(6-4) 婉曲表現
 ひどい胃の痛みを正確に、しかし生々しい表現を用いずに書く。
 言葉づかいの悪さを理由に解雇するための理由書を、訴訟を起こされるおそれのないように書く。

(6-5) 曖昧な表現
 単純な内容の文章を、何が言いたいのか伝わりにくい難解な表現に書き改める。

(6-6) 横柄な文章
 一人称の文体で書かれた誠実な人柄の文章を、書き手が偉ぶっていて自己中心的であるような印象を受ける表現に書き改める。

(6-7) 弱気な表現
 議論調の文章を、自信のなさをにじませた言い逃れやためらいのある表現に書き改める。

(6-8) 強化・弱化
 説得力に欠けた文章を、必要に応じてアイデアや詳細を補いながら説得力のある文章に書き改める。また、その逆も行う。

(6-9) 目的の変更
 新聞・雑誌から皮肉が込められた文章を探し出し、それを皮肉のない文章に書き改める。
 また、ある事実を述べた短い文章を探し出し、その事実に基づく行動を提案する文章を書く。

[7] 観察力

(7-1) 拡大と縮小
 昨日の出来事を1つ取り上げ短い文章にまとめる。次に、その文章を5ページ程度に膨らませる。そうしてできた文章を短く要約し、元の文章と比較する。

(7-2) 視点を限定する
 好きな食べ物を1つ選んで、その外見のみ取り上げて記述する。
 好きな映画を1つ選んで、そのオープニングの音のみ取り上げて記述する。

(7-3) 感覚の記述
 ある品物を選び、見た目・音・におい・味・手触り、それぞれについて特徴を書く。
 日常生活から一場面を選び、五感で感じる経験としてその出来事を記述する。

(7-4) 経過変化の記述
 皿に緑色の葉、または花を乗せて、それを2週間毎日観察して記述する。

[8] 類似点と差異

(8-1) 比較
 2つの異なった品物を選び、それらの類似点を示すような直喩を作る。
 2つの似通った品物を選び、それらの相違点を説明する。

(8-2) たとえ
 「普段読み書きをしない人に図書館がいかに役立つか」を、その人たちが理解できるようなたとえを考える。
 「仕事をクビになる」とはどういうことか、子どもが理解できるようなたとえを考える。
 「農家の一年」を都会の人間が理解できるようなたとえを考える。

(8-3) 区別
 類義語辞典の中から10~15語の項目が掲載されている語を探し出し、それぞれの言葉の違いを説明する。

[9] 発想を強制的に生み出す

(9-1) 三題噺
 辞書から2つの語をランダムで選び、その2語を用いた文を作る。3語の場合も同様に作る。

(9-2) 分類
 辞書から20の名詞をランダムに選び、それをいくつかのグループに分類する。また、どのような基準で分類したのか説明する文章を書く。

[10] 韻律

(10-1) 韻を踏む
 新聞記事の内容を、二行連弱強四歩格(couplets of iambic tetrameter)・三行連強弱弱六歩格(triplets of dactylic hexameter)に書き改める。
 料理のレシピを自由律詩(rhymes vers libre)に書き改める。
 説明的な文章をバラッド(民間伝承の物語詩、ballad)に書き改める。
 短い理屈っぽい文章をヴィラネル(19行2韻詩、villanelle)に書き改める。

(10-2) ソネット
 1週間毎日新しいソネット(十四行詩、Sonnet)を書く。

(10-3) 拡大
 定型詩(metric verse)を用意し、意味を変えずに各行1拍ずつ増やす形に書き改める。たとえば、四歩格(tetrameter)から五歩格(pentameter)へ、五歩格(pentameter)から六歩格(hexameter)へのようにする。

[11] 要約

(11-1) 縮約
 文章を1つ選び、文字数を5%ほど減らして書き直す。25%短縮、50%短縮も同様に行う。

(11-2) 概要
 新聞や雑誌の記事を1つ選び、全体の流れがつかめるよう10文以内にまとめる。本についても同様に行う。

[12] 書き直し

(12-1) 反転
 1段落からなる文章を選び、その末尾の文が先頭に現れ、先頭の文が末尾に現れるように書き改める。ただし、中間の文はすべて書き直すことはあっても、先頭・末尾の文の変更は最低限にとどめる。

(12-2) 躍動感を変える
 普通の文章を、あわただしく展開する文章に書き改める。また逆に、ゆったりトロトロ展開する文章に書き改める。

(12-3) 詳細に表現する
 具体的な品物を選び、修飾語を用いずに1200字程度で表現する。4000字程度でも同様に行う。

(12-4) 比喩を取り除く
 隠喩表現を用いた韻文・散文を探し出し、隠喩的ではないたとえを用いた散文に書き改める。

(12-5) 定義文
 「手」「左」「歩く」といった単純な日常用語に対して、辞書のようなスタイルで定義文を書く。その上で、結果と辞書とを比較する。

(12-6) 具体例
 「寛大」「不屈」といった抽象的な語を選び、その実例を3~4個挙げる。また、それらを並べる順序を考え、その理由を書く。

(12-7) 説明
 一度も編み物をしたことがない人に向けて、セーターの模様を文章で説明する。
 一度も料理をしたことのない人に向けて、チョコレートケーキを作るコツを説明する。
 一度も自動車の運転をしたことのない人に向けて、イグニッションの入れ方を説明する。

(12-8) 絵・写真を文章で伝える
 かなりこみいった形の対象物について、そのものの名前やその部分の名前を用いずに、その形状・光景を伝える文章を書く。次に、その文章をもとにして知人に絵を描いてもらい、比較する。

(12-9) ジョーク
 冗談を書く。

(12-10) 翻訳
 読めない外国語で書かれた文章を、その外国語の辞書を駆使して翻訳する。

(12-11) 文章の復元
 他人が書いた3~4ページからなる文章を素材にして、その文章からいくつかのキーワードを抜き出し、カード1枚1枚に1つずつキーワードを書き出す。カードはシャッフルしておく。3週間後、そのカードのキーワードから元の文章を復元する。その結果と元の文章を比較する。

(12-12) ノンストップで書き続ける
 同じことを繰り返さず、意味のないことも書かずに、手を止めずに一定のスピードで5分間文章を書き続ける。また、20分間にして同様のことを行う。

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