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 2009年7月4日付の毎日新聞の記事です。

<文章検定>当面中止、漢検協会が協力解消 5万人に影響も

 背任罪で起訴された財団法人「日本漢字能力検定協会」の前理事長親子の関連会社が実質運営し、年間5万人近くが受検する日本語文章能力検定(文検)が当面中止されることになった。日本漢字能力検定(漢検)との相乗効果を狙い文検を監修してきた協会が、関連会社との取引見直しに伴い協力をやめた影響。一方、漢検のコンピューターでの随時受検(CBT)も、システムの特許権を関連会社が持っているため受け付けを停止した。受検者に事件のとばっちりが及んでいる。

 ……(以下略)

 「公」であるはずの人間が「私」にまみれ、一般人に危害が及ぶ。「危害が及ぶ」がオーバーだとしても、その機会が失われていく。

 世間ではあまり知られていないのでしょうが、文章検定はよく考えられていました。級を追うごとに「説得力のある文章」の構成法が身につくようになっています。

 スタート級の5(~7)級では「事実をありのままに伝える」訓練です。1枚の絵を見て、その絵の見ていない人に文章でその絵の内容を伝えるものが典型的な例です。ここでは「ありのまま」に伝えるのが目的なので、想像上の余計な情報を付け加えると減点を受けてしまいます。大人の男性と小さな子を見て「親子」と書いてしまったり、時計を見て走っている人を見て「あせっている」などと書いてしまったりしたらいけないのです。
 4級では「事実に対して自分の意見を表明する」訓練です。「世の中で○○という現象が起きている。それに対して私は△△と考える。」このような形式の簡単な小論文を作成します。
 次なる3級では、4級の内容に根拠が付け加わります。つまり、「事実→意見→根拠」という3段落構成の小論文のトレーニングです。具体例を挙げるならば、

【事実】
 携帯電話を持つ小学生が増えているというデータがある。
【意見】
 私は、小学生に携帯電話を持たせるべきではないと考える。
【根拠】
 なぜならば、携帯電話の持つ危険性を回避するには判断能力に乏しい小学生には難しいからだ

と、こんな感じです。「事実」に対するお題は問題文中に提示されて、そこから自由に発想を膨らませて小論文を仕立て上げます。お題に対しての賛成・反対は自由です。
 次の準2級で一通りの形が完成します。3級までの「事実→意見→根拠」に「予想される反論に手を打っておく」が加わります。「事実→意見→根拠→反論への反駁」という構成になり、「説得力のある文章」の構成の型が完成します。先ほどの例に付け加えるならば、

【反論への反駁】
 むしろ携帯電話でいつでも連絡を取れるようにすることで危険性が回避できるとの声があるかもしれない。しかし、携帯電話を持つことでの危険性の回避は他の手段で得ることはできても、携帯電話自体が持つ危険性は他の手段では回避できない。

 もっとすっきりと短くまとめたかったのですが、イメージということで勘弁してください。反駁にしては、実のところ弱いです。もちろん実際の検定ではもっとたっぷりと書かなくてはいけません。ちなみに、携帯電話についての僕自身の意見を書いたわけではありません。突飛なことを書くより、ありがちな例で無難にまとめてみたかっただけです。

 文章検定ですから、文章作成が一番大きな配点となっています。しかし、文章を書くだけでなく、文章を書く前提となる技能を問う問題も各級で出題されます。文章の中で適切な語彙を選び出すもの、段落構成について問うもの、文章の内容を読み解くもの。どれも文章を書くためには必要な技能です。他にも、要旨文の作成や手紙文の作成といった出題もあります。

 微に入り細に入り文検はよく工夫されています。型を身に付けるのには、(最短ではなくとも)確実性があります。型を身に付けて初めて、自分スタイルの文章が書けると思うのです。まさに「守破離」の考えです。
 みすみすなくすのは実に惜しい! 個人的に文検を応援したいです。カムバック!文検!

 ああ、ちなみに、僕は文検2級取得者です。


○日本語文章能力検定協会 トップページ
 今のところ、文検休止のお知らせが掲載されています。リンクもほとんど外されています。
 http://www.kentei.co.jp/bunken/index.html

○自分のブログの記事から「儲けすぎ?! 漢検協会」
 批判に高まる漢検に対し、別の側面から語ったものです。
 http://tblb.blog.shinobi.jp/Entry/13/

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