忍者ブログ
[57]  [56]  [55]  [54]  [53]  [52]  [51]  [50]  [49]  [48]  [47
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 全国の40歳~69歳の男女約9万人(ただし、調査開始時にがん・循環器病の発病がない人)に対して13年間にわたる追跡調査の結果です。調査をしたのは厚生労働省研究班です。
 調査内容は次の(1)~(3)の関係を調べるものです。

(1) 現在の身長と体重
(2) 20歳からの体重変化 ※ダイエットによる体重変化は除く
   → [-]5kg以上減少
     [+]5kg以上増加
     [±]体重変化5kg未満 にグループ分け
(3) 約13年の追跡期間中の総死亡、がん、循環器疾患死亡率


 下のリンク先が厚生労働省研究班による発表です。

○「体重変化と死亡率との関連について ―概要―」
 http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/101/weight_change_mortality.html


 この調査から導かれている結果は以下の3点です。

【A】20歳から5kg以上減少している[-]グループの死亡率が高い
 40歳~49歳、50~59歳、60~69歳のどの年齢層でも[-]グループの死亡率が[+][±]グループに比べて一番高いという結果になっています。また、死亡原因(総死亡、がん、循環器)のほぼすべての結果で[-]グループが[+][±]グループに比べて死亡率が高いという結果になっています。唯一の例外が、40歳~49歳のがんによる死亡率で、ここについては[-]グループの死亡率がわずかの差ながらも一番低い結果となっています。
 なお、年齢が進めば進むほど死亡率の差が大きくなっているのがわかります。

【B】20歳から5kg以上減少している[-]グループは、体重変化が5kg未満の[±]グループに比べて、男子では1.44倍、女子では1.33倍、死亡リスクが高い
 この文だけ読むと【A】を数値化しただけにも見えます。解説を読んでいくと、その具体的な姿が浮かび上がります。
 まずは、「年齢、追跡開始時の体格(Body Mass Index)、喫煙状況、飲酒状況、運動習慣、慢性疾患(高血圧、糖尿病、肝臓病、腎臓病)既往歴の影響を考慮しました」とあります。どう考慮したのかは書いてありませんが、余計なファクターを取り除くことで体重変化と死亡率の関係を調べているのが伺えます。
 男性について詳しく見ると次のように書かれています。50代、60代では[±]グループに比べて[-]グループのがん・循環器疾患による死亡リスクが高くなっています。一方40代では、がん・循環器疾患による死亡リスクが高くなっています。
 女性については、どの世代についてもがん・循環器疾患による死亡リスクと体重減少の相関関係はなかったようです。

【C】体重増加と総死亡との関連は薄い
 今度は、20歳のときの肥満の有無をBMI(※)=25kg/m2を境に分け、その後の体重変化と死亡率の関係を見ています。

(※)BMI
 日本語で「ボディマス指数」、英語で「Body Mass Index」といい、英語での名称の頭文字を取ったもの。次の式で計算されます。
   BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
 つまり、BMIとは体重を身長で2回割ったものです。ただし、身長を表す単位はcmではなく、mであるのに注意が必要です。
 WHO(世界保健機関)では、BMI25以上を「標準以上」、30以上を「肥満」としています。

 この調査によると、男性では20歳のときの肥満の有無にかかわらず、[-]グループの死亡率は[±]グループに比べて高くなっています。
 また、男女とも体重増加と死亡リスクの関係性は認められなかったようです。


 ここまでが厚生労働省研究班のレポートを元にまとめたものです。「まとめた」という割には冗長な感がぬぐえませんが、ここは目をつぶってください。

 この調査結果を知ったきっかけは新聞記事です。新聞記事を読んで疑問点や疑わしいところが多々あったので、その情報源を探して厚生労働省研究班のレポートにたどり着きました。しかし、新聞記事を読んだときに感じた疑問点や疑わしいところは晴れていません。むしろ、さらなる疑念も沸き起こりました。

 上の方に貼り付けたリンクをたどってもらうとわかるのですが、結論【A】【B】にあたる部分まではしっかりとデータが掲載されています。しかし、結論【C】にあたる部分ではデータが掲載されていません。尻切れトンボです。宿題の締め切りが迫っているぐうたらな学生が、形だけでも整えて締め切りギリギリに提出したレポートのようです。厳しい教授ならチラッと見て「不可」を出すレベルです。
 これがレポートを見て感じたことです。

 そもそも新聞記事を見て感じたことは何でしょう。

 1つ目は「因果関係」を調べたのか、それとも「相関関係」を調べたのかがわからなかったのです。読むとわかりますがレポート中には「関係」としか書いていません。直接的には「因果関係」とも「相関関係」ともとれないようになっています。
 上で書いた「ぐうたら学生のレポート」の部分には次のように書かれています。

〔引用1〕男性では、20歳のときの肥満の有無にかかわらずその後の体重減少が死亡率のリスクを上昇させていました。
〔引用2〕体重減少は男女とも総死亡のリスクを上昇させ、さらに男性においては、がんと循環器疾患死亡リスクを上昇させるという結果になりました。

 一瞬「因果関係」のように見えます。けれども、どちらの文も「リスクを上昇」としか書いてありません。「死亡の危険性が上がる」ということです。決して「体重減少が死亡をもたらす」とは書いていません。絶妙な書き方で「因果関係」にならないように避けています。
 「相関関係」についても巧みに言及を避けています。レポート中のどこにも「体重が減少すればするほどリスクが高まる」とは書いていないのです。ただただ、[-]グループの死亡リスクは[±]グループのリスクより高かった、ということしか書いていないのです。
 「相関関係」に言及しない理由が僕には見つからないのです。「相関関係」を示した方が説得力を増します。「5kg減ではこれくらいのリスク。10kg減だとさらにリスクが高くなって、20kgを減っちゃうと、ほらこんなにリスクが大きくなる!」と訴える方がインパクトがあるというものです。「相関関係」を示す必要がないと考えたのか、それとも説得力を強めるだけの「相関関係」が認められなかったのか。とにかく謎です。

 新聞記事を読んで感じたことの2点目。それは、誰しも感じるであろう体重増加によるリスクは本当に低いのかということです。「メタボ」なんて言葉を持ちますでもなく、どこか違和感を感じます。体重増加(正確に書くならば内臓脂肪増)により成人病になるリスクが高まるのは、議論の前提して構わないと思うのです。
 違和感を払拭するために考えました。これはあくまでいいかげんな予想でしかありません。今回のこの調査は13年間の追跡調査です。たかが13年間です。13年程度では体重増加により死亡リスクの上昇は起きない、つまり体重増加による害はもっともっと長い年月をかけて体を蝕んでいくのではないでしょうか。僕は医学の専門家ではないですし、この予想を確かめる術も持たないので、あくまでもいいかげんな予想です。

 3点目は「体重が減少する人が死亡した」のか「死亡する人の体重が減った」のかがはっきりしないということです。
 冷静に読まないと、前者のように体重減少が引き金となって死亡につながると読んでしまいます。けれどもレポート内では「因果関係」に言及していないのですから、後者である可能性もあるのです。病にかかり、体重が減少して、死に至る、なんてことは想定の中にあってしかるべきです。「体重減少による死亡リスク」を知りたいのであれば、両者を区別する必要が絶対にあります。しかし、残念ながらこのレポートではその点には触れられていません。

 4点目として、なぜダイエット組を調査から外したのかが理解できませんでした。
 「体重減少」によるリスクを訴えるのであれば、ダイエット組の死亡リスクが思い浮かびます。けれども、この調査はダイエット組を除いています。ダイエット組以外の体重減少グループというと、何か訳あり。大胆に書いてしまえば、生活習慣が整っていないか、病気にかかっているか、あまりよろしくないイメージを抱きます。「ダイエットをしていないにもかかわらず体重が減ったら死亡リスクが高まりますよ」と述べているようなものですから、そんなの言われなくてもわかっている!と言いたくなります。価値あるデータにするには、やはり「ダイエット組」の調査も別途行って欲しかったです。

 まだまだ突っ込みたいところはあります。
 BMI25を肥満の有無の境界線にしているのは、はたして適切なのでしょうか。身長160cmで体重64kg。身長170cmだと体重73kg。死亡リスクが高まるライン、もっと上に来るような気がします。うーむ。
 【B】での表のデータと、結論【C】で述べていること。比べるとどこかすっきりしません。【B】の表だけ見ると体重が増加するとリスクが減っているように見えます。【C】では体重増加による死亡リスクの増加はないと書いています。うーむ。
 レポート締めくくりがあまりにお粗末です。「体重が減少する原因としては、(ダイエットではなく…引用者挿入)喫煙、肝臓病や糖尿病等の慢性疾患、栄養不良といった様々な健康問題が背景にあるものと考えられます。/いずれにしても、20歳のときの体重とその後の変化(特に、体重減少)は、健康管理をする上での重要な指標になることが示されました。」って、そりゃそうでしょうとも。締めくくりは「体重減少と死亡リスクの関係」ではないのですか。うーむ。


 ここまで書いての正直な感想。疲れました。
 休憩したら、厚生労働省研究班のレポートではなく新聞記事の方に突っ込みを入れていきます。こっちもいろいろとあったんです。

拍手[0回]

PR
このサイトについて……
 思っていること、考えていることを誰に頼まれることもなく綴っています。自分の思考の整理として書いているので、日記ではありません。
 自分のアンテナに引っかかった面白いもの、興味惹かれるものも収集して記録しています。
 不定期連載です。気の向いたときにお立ち寄りください。

 なお、別サイトで読書記録をつけています。こちらにもお立ち寄りいただければ幸いです。
http://bookdiary-k.blogspot.com/
twitter
カウンター
(since 2009/02/01)
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
クリックバトラー
忍者ブログ * [PR]