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なんだか最近、書店で「エッセイマンガ」を見かけることが多くなっている気がします。『ダーリンは外国人』(小栗左多里・著、メディアファクトリー)や『ツレがうつになりまして。』(細川貂々・著、幻冬舎)が出版され出した頃からその傾向がありましたが、最近その傾向が強まっているのを感じます。『ツレがうつに……』は、今度NHKでドラマ化(※)されるようですし。
(※) あの絵のタッチのおかげで「ウツ」という重いテーマが清濁まとめて受け止められることを思うと、実写化したとき「重さ」だけが強調されるのではと不安なのですが。もしくは、単純に苦労&成功物語化してしまいそうで……。脚本を引き受けた作家の度胸に感服します。
エッセイマンガの点数が多くなり、本屋の一角を賑わせています。「出版不況」なんて言われている昨今で、どれだけ売れているのかはわかりませんが、出版点数をみる限りでは密かなブームが起きているのは間違いないようです。
出版されるまでにすでに選別が行われているからでしょうか、アイデアに富んでいます。しかし、アイデアに優れているばかりに不安がよぎります。このうち何人の作家が生き残るのだろうと。
エッセイマンガというのは、そのエピソードの面白さだけで充分魅力を発揮します。エピソードそのものが面白いからです。
けれども、「エピソードの面白さ」だけでこの業界で生き残れるのでしょうか。疑問が湧いてきます。
「エピソードの面白さ」だけだったら「替え」はいくらでもいると思うのです。変な話、出版社側の立場にしてみれば若い人の方が原稿料を安く抑えられるわけです。「エピソードの面白さ」にしか魅力がなければ、次から次と新人を投入する方が効率的であるように見えます。
せっかくこうやって日の目を見ているのですから、実力を付ける努力をしてほしいと思うのです。又とないチャンスを逃してほしくはありません。画力は上げてもらいたいです。コマ割りに工夫を感じられない作家も多く見られます。セリフ回しもまだまだ工夫ができると思うのです。
「描けない人」が偉そうに講釈を垂れる資格は本来ないのですが、つい書きたくなりました。エッセイマンガの作家さんたちがこの先もエッセイマンガを続けていくにしろ、ストーリーマンガを描くにしろ、実力を付けないことには職業として続けていけません。「次を読みたい」という期待の裏返しとしての講釈だと考えてください。
最近読んだ(まあ、本屋での立ち読みで誠に恐縮なのですが)エッセイマンガを何点か取り上げておきます。
『ひとりぐらしも9年め』
著者:たかぎなおこ
発行:メディアファクトリー
この『ひとりぐらし』シリーズの他にも、『浮き草デイズ』(1)(2)(文藝春秋)、『150cmライフ。』(1)~(3)(メディアファクトリー)、『ひとりたび』シリーズ(メディアファクトリー)など数々のエッセイマンガを書いているたかぎさんの新作です。
たかぎさんの「ゆるさ」は、1つの芸だと感じます。
自分の「弱さ」を隠すことなく描きます。「だらしなさ」も「いいかげんさ」といった「弱さ」をそのまま描きます。その「弱さ」は、多分、ほとんどの人が持っている「弱さ」で、それを隠すことをしません。だから、どこか親近感が湧いてくるのでしょう。弱いのは自分だけではないんだと安心できます。この安心感と作風が相まって「ゆるさ」が演出されます。
それにしても、ビールを飲む姿が印象的です。何とも幸せそうに飲んでいます。どんなコマよりも気持ちがこもっているのを感じます。
『結婚式っておもしろい!?』
著者:たかはしみき
発行:主婦と生活社
本屋で見つけて夢中になって読んでしまいました。
いや、「結婚」なんて、まだまだ縁のない話です。けれども、結婚を巡る苦労が赤裸々に描かれていて、その生々しさに引き込まれてしまったからでしょう。時を忘れて読みふけってしまいました。
多くの人はそうだと思うのですが、多分、このマンガを読むと、登場人物を自分に置き換えてしまうのではないでしょうか。来るべきに備えて脳内シュミレーションを行っているのだと思います。この苦労は他人事ではない。その思いが夢中にさせてくれます。
途中の波瀾万丈でドキドキさせてくれるのですが、締めくくりが爽やかに終わってくれるので、読者としては救われます。
いよいよ結婚が決まるぞというカップルにこの本を贈ったら、喜ばれるのではないでしょうか。肝が据わって、苦労を乗り越えてくれそうです。
それはさておき、この本には「発行日」が書かれていないのに気付きました。
日本の書籍には「発行日」が書かれていることが多いのですが、そういう決まりは存在しないそうです。「発行日」を書くのはただの慣習。
この『結婚式って……』に「発行日」が書かれていないのって、意図的なのでしょう。営業的な戦略を予感させます。
『理系クン』『理系クン 結婚できるかな?』
著者:高世えり子
発行:文藝春秋
結婚つながりでもう1冊。「理系クン」を文系彼女から見たエッセイマンガです。1冊目の『理系クン』でカップルとしての様子が描かれていましたが、2冊目の『理系クン 結婚できるかな?』でついに婚約しました。なんともおめでたい話です。
「理系」の僕としては、何とも身につまされるマンガです。ここに描かれる「理系クン」が他人に思えません。
このマンガを読むと「理系クン」の思考がつかめます。理屈っぽくて、自分の趣味嗜好に忠実で、アルゴリズムで物事を処理したくなり、意味の有無で価値判断をしてしまう。自分はこんなに極端ではない!と多くの「理系クン」は思うのでしょうが、他人から見たらこう写るのでしょうね。「理系クン」の一員として、ゾッとします。
もちろん、個人差はあるし、色眼鏡で見るのもいけませんが。
『理系の人々』(よしたに・著、中経出版)も同じ「理系クン」系統の本ですね。こっちはこっちで違う方向の極端ですが。
(『ぼく、オタリーマン。』シリーズが100万部突破だそうで。これはすごい!)
『日本人の知らない日本語』
著者:蛇蔵、海野凪子
発行:メディアファクトリー
このマンガは原作者(海野凪子さん)と漫画家(蛇蔵さん)が別の人というものです。エッセイマンガでは珍しいです。原作者である日本語講師が1つのキャラクターになっていて、魅力的な存在になっています。
エッセイとして自分のことを自分で描くと、どこか照れが出てしまいます。けれども、このマンガでは照れを出すことなく突き抜けていて、それがいい塩梅に面白さを誘発しています。
『ダーリンは……』『日本人の……』と2つのマンガを読むと、言葉にこだわりを持った外国人はそのこだわりだけで充分面白いのがわかります。「そこが気になるのか!」というのが新鮮です。そのこだわりに翻弄されている姿が笑いを誘います。
印象に残ったマンガを書き記しました。他にも読んだものはあるのですが、あまり印象に残っていません。これからも「エッセイマンガ」を追いかけ、応援していきます。
自分のアンテナに引っかかった面白いもの、興味惹かれるものも収集して記録しています。
不定期連載です。気の向いたときにお立ち寄りください。
http://bookdiary-k.blogspot.com/
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