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1つ前の投稿と連動しています。ぜひ前の投稿を先にご覧ください。
○「体重変化と死亡率の関係調査」を読んで
http://tblb.blog.shinobi.jp/Entry/52/
前の投稿では厚生労働省研究班のレポートに突っ込みを入れるように、好き勝手書きました。このレポートを元に新聞社が記事を書いています。下に各新聞社の記事のリンクを貼りました。
○読売新聞「やせると肥満より危険、5キロ以上減死亡率1.4倍…厚労省調査」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090423-OYT8T00613.htm
○毎日新聞『体重:要注意!5キロ以上減 増加より高死亡率--9万人調査』
http://mainichi.jp/life/health/news/20090423dde001040026000c.html
○産経新聞『成人後、体重減ったら気をつけて 「増加」より死亡率高く』
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/living/246146/
○時事通信「若いころからの体重減、要注意=がんなど死亡リスク増-厚労省研究班」
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%b8%fc%c0%b8%cf%ab%c6%af%be%ca%b8%a6%b5%e6%c8%c9&k=200904/2009042300288
まずは読売新聞の記事から俎上に載せます。
成人後に5キロ・グラム以上体重が減った中高年は男女とも、死亡する危険が1・3~1・4倍高いことが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の大規模調査でわかった。
どうでもいいツッコミからいきましょう。
「キロ」と「グラム」の間の中黒(・)。なぜここに中黒? 2単語からなる言葉なら間に中黒を打つのでしょうけど、英語でキログラムはkilogramで1単語。この観点からは中黒の必要性はありません。そもキログラムで中黒を入れるなら、「センチ・メートル」「ミリ・アンペア」「ヘクト・パスカル」「メガ・バイト」ってなるのでしょうか?
次は大事なツッコミ。
引用した文中に「1・3~1・4倍」とありますが、「何」の1.3~1.4倍なのかが書かれていません! この記事を書いた記者もチェックするデスクも気づかなかったのでしょうか。気づかないのにも恐ろしいけど、この重要性を知らないのだとしたらもっとゾッとします。
このときに書きましたが、新聞というメディアには大きな期待を寄せているのです。それだけにこういう記事を読むと残念な気分になります。文法に誤りがある、漢字に誤りがあるなどとは違います。比較対象のない「○倍」をそのままにしておける感覚が怖いです。「がんばれ! でないと本当にインターネットに食われるぞ!」そうエールを送りたいです。
そうは言っても、次の引用文のような独自の考察を入れる姿勢には感心します。
やせると死亡率が上がる原因は今回の調査からはわからなかったが、体重低下で免疫力が落ち、感染症などにかかりやすくなることが考えられる。
きちんと「独自の考察」だと文体から判断できるようにしています。ごまかすことなく堂々と書いています。立派なことです。
読売新聞に続いて毎日新聞。
その結果、男性は、体重減少群の死亡率が変化の少ない群の1・44倍、女性は1・33倍と高かった。一方、男性の体重増加群の死亡率は、変化の少ない群の0・89倍、女性は0・98倍と逆に低かった。
毎日新聞では体重増加による死亡リスク減について触れています。厚生労働省研究班のレポートに掲載された表にははっきりと書かれています。けれども、後半では「男女とも体重が増加することの死亡リスクの増加は、ほとんど認めませんでした」と書いている。矛盾はしていないのですが、どこかすっきりしない。研究班としては「リスク減」とは書けないのでしょうか。「メタボ検診」などの政策と逆行するから? 研究班の意図と、毎日新聞がこれをどう捉えたのかを聞き出したいです。
うわさに聞いていましたが、毎日新聞は署名記事が増えているとか。この記事も署名記事になっています。永山悦子さんが書いています。だからなのでしょうか、スキが少ない。「日本人の体重変化と死亡率の関係が明らかになったのは初めて。」「ダイエットによる影響は調べなかった。」なんかは短いながらもポイントを抑えていて好感をもてます。こういう記事を読むとうれしくなります。
続きまして産経新聞。
一番奇妙なのが、記事文章の途中で他の記事へと誘導するリンクが挿入されていること。意図がまったくわかりません。読んでもらうのを拒否している?
成人後に体重が増えた人よりも、減った人の方が死亡率が高いとの研究結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が23日、発表した。
引用した文は記事の冒頭です。新聞記事は頭括式になることが多いので、いわば要旨になります。
気になったのは、「成人後に体重が増えた人よりも、減った人の方が死亡率が高い」というところ。体重増加組と体重減少組を比べるのが主旨なのでしょうか。下手すると「ダイエットするくらいなら太った方がいいよ」という意味に取りかねません。危険な表現です。その上、「……との研究結果を、厚生労働省研究班(……)が……発表した」とあり、こうが発表はしていません。記者の勝手な(はオーバーですが)解釈なわけで、それをこの記事の主旨であるように書くのはいかがなものでしょう。
そうはいっても、段落ごとに最重要→重要→まあ重要→やや重要、ときれいに重要度が高い順に並んでいる構成は見事です。それだけに冒頭の1文が残念です。
最後に時事通信です。
第2段落冒頭の次の1文にキラリと光るものを感じます。
生活習慣病対策の特定健診は、体重の増加のみをリスク要因としている。
生活習慣病対策に関する事実を述べているだけなのですが、言外に「これでいいのか!」という主張を感じます。記者のメッセージが込められています。
研究班の調査内容を伝えるだけなら不要な文です。けれども、この記事の記者はこの文を第2段落に持ってくることで体重減への危険性をアピールすることに成功しています。数字を並べるよりも心をつかみます。
テクニックでは評価できないこういう文章が書ける文章能力、あこがれます。
すべての記事に共通して研究班の一員で愛媛大大学院准教授の斉藤功さんがコメントしています。内容は似ているのに、表現が少しずつ違います。新聞社ごとにコメントを変えている面倒なことはしていないでしょうから、各新聞社がアレンジを加えているのでしょうか。不思議です。
読売新聞
「成人後に5~10キロ・グラム程度太るのは自然な現象。肥満の危険性が強調されることが多いが、体重減少も重視しないといけない」
毎日新聞
「死亡率を上げている原因は不明だが、成人以降の自然な体重減少は、健康障害が起きているシグナルの可能性がある」
産経新聞
「成人後には体重が増えるのが一般的なので、体重が減った人は、何らかの健康障害が背景に隠れていると考えられる。体重が減っている人は自分の健康管理に注意が必要だ」
時事通信
「若いころより体重が増えるのは一般的。死亡に関しては、体重が落ちる人の方を注意して見た方がいい」
どれがオリジナルの発言に近いのかは不明です。こうなると何を信じていいのかわからなくなります。
ツッコミを入れるのであれば、体重が増えるのはそんなに一般的なのでしょうか。統計データがあるならば見てみたいものです。
朝日新聞はまだ記事にしていないようですね。記事にするつもりがないのでしょうか。それとも、後出しジャンケンのようにユニークな切り口で書いてくるのでしょうか。
この報道がなされた4月23日、ラジオでもこの記事が報道されていました。どの番組なのは明らかにしませんが、メインパーソナリティの方が「ダイエットと死亡リスク」の話をしてしまいました。研究班はダイエットとの関連は述べていません。ろくに記事を読んでいないのが露呈してしまいました。そうでなくてもこのパーソナリティ、権力を否定してみせる発言ばかりしていて、オリジナルの意見を聞きません。「お願いだから正確に伝えて! 勉強して! 言葉を垂れ流しにしないで!」と強く願います。ラジオの価値を貶めないでほしいものです。
それにしてもたっぷりと書きました。この記事についてはお腹いっぱいです。
「暑苦しく語りたい!」というカテゴリーを作りました。時々沸き起こるこういう文章をこれからも書き散らしていこうと思います。
自分のアンテナに引っかかった面白いもの、興味惹かれるものも収集して記録しています。
不定期連載です。気の向いたときにお立ち寄りください。
http://bookdiary-k.blogspot.com/
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